箱プレイ

《総評》

傑作ではないが、きれいにまとまった良作。

　基本ノベルゲーで途中に選択肢がいくつかあり、それによって好感度が上昇する、というシステムです。ノベルゲー嫌いの私でも楽しくプレイできたので、特別興味のあるキャラがいない人でもそれなりに楽しめる作りになっていると思います。
　ストーリーの大筋はみんな一緒ですが、攻略キャラによって状況が違うので、同じ流れでも意外と飽きません。コンプはそれほど苦がなく達成できると思います。
　一度バグって進行不可になり、セーブデータからやり直しましたが、何度もプレイして一度だけだったので、あまり気にすることはないと思います。操作していてストレスを感じることはありませんでした。

キャラ萌えに期待してはいけない。

　私自身、好きなキャラはいるんですけど、キャラ萌えでぐいぐい攻めてくるタイプの内容ではないので、○○が素敵！とか○○がかっこいい！なんて思うより、あーみんなと一緒で面白かった、って感じで終えるゲームだなと思いました。キャラのいろんな姿を見たい、一人のキャラをじっくり見たい、というタイプの人には物足りないと思います。
　後半は1キャラメインで進行しますが、それでもみんなでワイワイ行動するシーンは多いですし、主人公含めクラブ活動を楽しむような感覚なので、そういうのが好きな人にはいいと思います。
　一般的な乙女ゲーに飽きた人にもオススメです。

CEROはC（15歳以上対象）。

　過激な描写はありませんが、どのキャラとも一晩を共にする展開があります。しかし、キスの音がするとか、濡れ場を演出、みたいなことはありませんので、イヤホン必須ではないですけど、とりあえず全員、高校生の主人公と一線を越えます。
　普通にエッチした方がマシだわ、みたいなあざとい演出がないのには好感を持ちましたが、立場的に未成年とそういうのはどうなの…と思うこともあったので、苦手な人は要注意です。

　合意の上なら感情的にはアリと思うんですけど、法律的にはアウトですからなあ。
　法律に詳しいわけではないですけど、アメリカでも未成年相手は厳しいですよね、多分。生徒と関係を持った教師が逮捕される事件もありましたし。
　フォローすると、一応生死を賭けた戦いに挑む前にそういう関係になるので、仕方ないかなあとも思うんですけどね。あと法律云々言うならテーマ自体が完全に違法なので、細かいことはいいんだよ、って気分でプレイした方がいいのかもしれません。

グラフィックと主人公について。

　個性的な絵師さんですが、スチルだけでなく通常画面でも絵は綺麗だなと思いました。デザインは古いですが、堅実な感じがして私は好きです。
　ゲームのノリもわりとドタバタコメディというか、昔の少女漫画的なやりとりがありますので、そういうのが好きな人にはツボだと思います。ゲーム内容と絵は、よく合っています。

　主人公のナタリー（変更可）は、見かけは美人タイプですが性格は少し地味なくらいで、のんびりしている良い子です。良い子というか、善人というか、非常にまっとうで、笑い方が「へへ」だったりして、あまり女っぽくはなく、どっちかというと中性的な、子供っぽい可愛らしさのある女の子です。
　どのキャラとも燃えるような恋愛って感じではないんですけど、いい子だなあ、と思われてだんだん好きになる、という過程に納得できる主人公です。
　突出したところのない、平均的な女の子、という設定なんですけど、無個性という感じはしませんでした。タイプとしては、VitaminZの主人公に近いかな。今のところ、かなり好きなタイプの主人公です。

《キャラ雑感》

・瞬
　IQ190の天才で、リーダー的存在。
　日本人設定のわりに日本人っぽさはほとんどありません。クールで物事を合理的に考えるタイプだけど、冷たくはないです。本心は見えにくいですが、社交的で洗練されています。
　ちょっと癖のあるタイプで、嘘つきっぷりはレイモンドと同じくらいだと思いますが、そこが特徴ですし嫌味はないのでいいと思います。むしろもうちょっと個性を出しても良かったかなあ。わりとおとなしい印象です。

・ダニエル
　熱血漢のわりに、意外と繊細というか打たれ弱いというか、扱いが難しい人。
　最初に攻略したのですが、見た目より面倒くさい人だなあと思いました。この人も根はいい人なんですけど、すぐ手が出たりカッとなるので、あまり好きなタイプではないかな。
　中の人が好きなので、声を聴くのは楽しかったです。

・アラン
　意外に天然で面白い人でした。軍経験者で乗り物の操縦がうまい会計士、というよく分からない設定だったのですが、確かにいろんな面のある複雑な人でした。
　何だかんだ言って、この人が一番役に立つ人物だと思います。性格はおとなしいのに体が丈夫だし、イケメンだし、イケボだし、会計士ということはお金の計算もちゃんとできて頭もしっかりしてるし、隙がありません。
　でも何か残念な感じがするところが、愛嬌があって良いと思います。

・マイケル
　空気を読めない、無神経でPCに強い若者、というと嫌なイメージしか湧かないと思いますが、マイケルは天真爛漫で好感を持てるタイプです。彼もわりと苦しい立場にいるんですけど、あまり気にせず人生を謳歌していて、悪いことをした時にはきちんと反省もできるし、まっすぐ育った感じの子です。
　こういうキャラは珍しいんじゃないかな。いろんなゲームをしてきましたが、あまりこういうタイプには出会ったことがありません。

・レイモンド
　41歳。
　もうこの年齢だけで、普通の乙女ゲームではないな…って感じですよね。しかもこのゲーム、180未満の人が結構多いのです。レイモンドも176cmなので、わりとリアルというか、高身長の若いイケメンばかり集めました、というのじゃないところがいいなと思いました。
　実際ゲームをすると、レイモンドは年齢のわりに我が儘なところもありますし、変なことを面白がったり、年のわりに子供っぽいところがあるので、そういうところがいいなと思いました。ギャップ萌えです。
　おっさんかわいいよおっさん、と思いながらプレイしてました。

・ルーク
　複雑な育ちのため、思春期に普通の生活をできなかったから未だにそこに止まっている、って感じのキャラです。何となく学生の不良っぽいんですよね。
　レイモンド、アランの次に好きなキャラです。尻尾をぶんぶん振ってるのに、なかなかこっちに来ない犬みたいなタイプだなと思ったので、多分ツンデレ要素があるんだと思います。
　何だかんだ言って、結婚したら一番ナタリーを幸せにしてくれそう。この人の妄想話とエンディングはほっこりします。

・その他キャラ
　このゲームは脇役の存在感が半端じゃないです。誰が得するのか全く分からない、脇役だけの展開なんかもありますが、乙ゲとして見なければ面白いと思いました。
　でもこういうシーンが多いから、乙ゲとしては中途半端な感じになっちゃったんだろうなあ。惜しいといえば惜しいんですけど、こういう乙ゲもあっていいじゃない、という結論に落ち着きました。
　あと、攻略対象を全員クリアした後に発生する隠しシナリオがあるんですけど、ここに出てくる相手役はかなり素敵でした。でもやっぱりこれも誰が得するのか分からないシナリオだったなあ。お話は面白かったんですけどね。