神学校
シナリオ …■■■■■
システム …■■■■■
グラフィック …■■■■□
キャラクター…■■■■□
一番好きなキャラ…レオニード
良い…秀逸なシナリオ、細かい配慮の行き届いたシステム
悪い…萌えが足りない
《総評》
神の話は出てきますがそうではなく、クオリティが高いという意味での神ゲーでした。これを書いている今も、記憶をなくしてもう一度プレイしたいゲームの一つです。ミステリーやホラーが好きな人はハマるんじゃないでしょうか。
ここまでのクオリティは想定外だったので、プレイしながら「何だこれ…」と何度思ったか分かりません。正直言うとBL的な楽しさはほとんどなかったのですが、それを差し引いても傑作としか言いようがありません。BLゲームをやりたいという人には物足りなさを感じるかもしれませんが、BLもある面白いゲームをやりたい、という人にはオススメしたい作品です。
時代は戦後、父親の母校である神学校に通う主人公マイケルは、長期休暇で帰宅した際に家族の惨殺現場に遭遇します。なぜ家族が殺されなければならなかったのか、誰に殺されたのか、そして壁に残されたメッセージは何を意味するのか。
事件の謎を探る為、彼は学校内で密かに行われているという、秘密結社の黒ミサに参加することにしました。その黒ミサや秘密結社を巡り、クラスメイトや教師など、さまざまな人々の思惑が複雑に絡み合い、次第にマイケルは自分の身に起こったことについて知ることとなります。
大まかに言うと、こんな感じの話です。
最初は関係ないと思われた断片的なエピソードが、最後に全て繋がった時の興奮は素晴らしいものでした。無駄なシーンはほとんどないと言っていいと思います。神学校という舞台にも、きちんと意味があります。神との関わり方は各キャラごとに違うのですが、あるルートでのマイケルと神の関わり方には感動すら覚えました。
萩尾望都や竹宮恵子など、70年代の少女漫画が好きな人には特にオススメしたいです。設定もクオリティも、その時代の漫画を彷彿させる作品でした。内容的には、萩尾望都の『トーマの心臓』が近いと思います。
作品の注意書きでもホラー描写やグロについて言及されていますが、怖い話は好きだけど、グロと驚かせる系の演出は苦手な私でも大丈夫なレベルでした。ですが、他のBL作品でのグロ注意という程度では収まらないグロがありますので、グロ一切NO!という人は要注意です。
細かく言うと、ゾンビ系、死体の図、虫が出てくるシーンなどがあります。それと、一度だけびっくりするシーンはありますが、音量を控えめにしておけば問題ありません。
ホラーやグロがダメだからプレイしない、というのはもったいないと思うのですが、心臓が弱かったり、こういうのを一切受け付けない人は、無理をしない方がいいと思います。
一応、グロOFFにできるモードはありますので、ほとんど耐性はない人でも何とかなるとは思いますが、それだとスチルが全て埋まらないようです。どんなグロやホラー表現より、この仕様が一番鬼畜だと思いました。
神学校は、一周がとても長いゲームです。遅延badもありますし、急いで進めようとしないで、ゆっくり進行するのがいいと思います。一般的なBLゲームの倍近くのボリュームがありました。
そして、そのほとんどがBLとは関係のないシーンです。BL展開が来る時には何となく分かるようになっていますので、普段ヘッドホンなどをしてプレイしている人も、怖かったら外してプレイしても平気だと思います。
BLシーンは他のBLゲームよりも少ないくらいでしたが、受攻が逆転するので、それを合わせると他のBLゲームと同じくらいになると思います。受を選んだか、攻を選んだかでその後の展開も微妙に変わるので、一人につき最低でも二周はすることになります。
それと、True EDでも明るい気分にはなれないルートもありますが、概ねTrueはハッピーエンドです。badもただ悲惨なだけではなく、余韻のあるものもいくつかありました。
システムは、かゆいところに手が届き、無駄がなく、隙がありません。他社作品ですが、乙女ゲームの三国恋戦記と同じようなシステムです。
ボイスセーブも完備していますし、セーブデータにキャラの顔アイコンやコメントをつけられるので、誰ルートで何EDを目指しているデータなのか、一目で分かります。
気になるキャラから始めるのでいいと思いますが、ニール編は怖いシーンが他キャラより多めでした。私はニールから始めたせいで、BLゲームというよりホラーゲームをプレイしている気分になりました。
レオニード編は笑えたので、明るい感じで終わりたいならラストに持ってくるといいかもしれません(ただ、ラストは隠しキャラで確定しているので、厳密に言うとラストにはなりません)。
あと、必ず最後にTrue EDを持ってきた方がいいです。救いのないbadが多いので、それが最後になるときついと思います。
《キャラ雑感》
・マイケル
可愛い系だから上級生のお気に入りみたいなタイプかと思ったら、全くそんなことはない、どっちかというと暴れ馬みたいな子でした。今は少し落ち着いているみたいですが、ショタ時代のわんぱくっぷりには笑顔になりました。
あまりにも健全なキャラなので、最初は性的なシーンに少し抵抗を感じたのですが、だんだん慣れました。こんなエロを感じないBLキャラっていうのも珍しい。でもマイケルはこういうがさつなところが魅力なので、これからも大事にして欲しい。
・ガブリエル
伸び伸びしているので、どっちかというとマイケルよりガブリエルの方が好きです。マイケルはちょっと大人ぶったことを言うからなあ。
ガブリエルの存在は癒し。
・レオニード
誰がこんなキャラだと想像しただろうか。そして私のボイスセーブがレオニードのセリフで埋まることも、誰が想像しただろうか。迷台詞が多すぎる。
この作品を買うのを渋っていた理由は受攻が逆転するからだったのですが、どっちにしろレオニードは可愛かったので、買って良かったです。ネタバレになるので細かくは言えませんが、レオニード編は今までプレイしたBLゲームの中でかなり上位に来るシナリオでした。笑わせてもらいました。
・セシル
よくできた話だったけど、設定がつらすぎて萌えられなかったです。何だかもう、そんな場合じゃないという感じでした。でも最後は幸せそうで良かった…。
ちょうどこの頃にドキュメンタリーを見たりして、あーあ…と思っていたので余計ずしっときました。やっぱり戦争の残した傷跡というのは計り知れないなあ。
でも病みそうで病まないセシルルートは、シナリオも中の人の演技も素晴らしかったです。そして、CGが綺麗なシーンが多かったです。シャガールの絵を思い出すような雰囲気でした。
・ニール
コミカライズでも扱われていましたし、恐らくメインなんだと思います。一番怖いルートでしたし、一番長いルートでもあったと思います。オーガストも裏のメインと言えると思いますが、ちょうど対になっているようにも感じました。そしてレオニードと同様、この人も最初のイメージとは全く違うキャラでした。
一番印象に残っているのは町でのイベントなのですが、あのシーンは本当に怖かったなあ。中の人の演技もうまくて、ニールをちょっと嫌いになるくらいだったな…。でもやっぱり、かっこよくて頼りになるキャラだと思います。
・オーガスト
このシナリオをよくやろうと思ったなあ、というのが正直な気持ちです。萌えを犠牲にし、物語の完成度を優先した結果がこれなんでしょう。だがそれでいい。完成度が高いということで得られる満足感というのもありますし、神学校はこれでいいのです。
このルートは、オーガストの地獄巡りにマイケルがつきあわされるという感じの話でしたが、プレイヤーもまた、その地獄巡りを一緒にしたのだと思います。地獄の果てに辿り着いたのがあのTrue EDだと思うと、やっぱりこれはBL話ではない、別の何かなんだろうな。
・その他
多分、このゲームで一番のグロ要素は校長。寄宿舎物では、こういうキモデブホモが校長というのはよくあるパターンなので、いつものあれかという感じでしたが、そんなレベルじゃなかったぜ。
演技はみなさん素晴らしかったですけど、特筆すべきは校長とアベルかな。アベルも寄宿舎物ではよくある、上級生に気に入られている可愛い下級生って設定なんですけど、背筋が寒くなるような展開が結構あって、萌えないけど面白かったです。
他には同室の子達やラザラス神父も良かったです。メインでないキャラも丁寧に描かれているのが、この作品の魅力の一つだと思います。
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